【薬局向け】調剤ベースアップ評価料とは?届出・対象職員・中間報告を解説

公開:2026年●月●日 最終更新:2026年●月●日 情報の基準日:2026年8月30日
薬剤師が執筆

令和8年6月に始まった、保険薬局向けの新しい評価料です。告示・通知・疑義解釈にあたって整理してみると、むずかしいのは2か所だけでした。管理薬剤師が実際につまずくところにしぼって解説します。

ひなちゃん
ひなちゃん先生、調剤ベースアップ評価料ってどんな加算ですか? 新しい加算って、それだけで身構えちゃって……
ふく朗先生
ふく朗先生分かるよ。引っかかるのはたぶん、「誰の給料が上がるのか」と「8月に出す報告書」の2つじゃないかな。
ひなちゃん
ひなちゃんまさにそれです。給料がいくら上がったかまで報告するって聞いて、それが特に……
ふく朗先生
ふく朗先生うん、そこがいちばん手間。ただ、比べるものは決まっているし、対象になる人の線引きもはっきりしているんだ。ひとつずつ見ていけば大丈夫だよ。

30秒でわかる3行まとめ

1

処方箋の受付1回につき4点

届出をした保険薬局が算定できます。令和9年6月以降は8点になります。

2

入ってきたお金は、全額スタッフの賃上げに使う

薬局の利益にはなりません。使いみちは通知で限定されています。

3

毎年8月に報告書を出す

「ちゃんと上げました」を書面で報告するところまでがセットです。実務でいちばん手間がかかるのはここです。

1

どんな加算? 点数と施行日

調剤点数表 第5節「その他」区分40

調剤ベースアップ評価料は、令和8年度診療報酬改定で新設され、令和8年6月1日から施行されました。

点数4点
算定単位処方箋の受付1回につき
算定の前提施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出ていること
令和9年6月以降8点

「8点」について

告示上は「所定点数の100分の200」という書き方です。また、実際の経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動して経営状況に支障が生じた場合は、令和9年度予算編成において加減算を含む更なる調整を行うとされているため、8点は確定ではありません

ふく朗先生
ふく朗先生見ておいてほしいのは、8点があくまで予定だということ。令和9年度の給与を8点前提で先に組むのは、僕なら避けるかな。今は4点で考えておくのが安全だと思うよ。

1年の流れ

5月届出様式103
6月算定開始4点
8月中間報告書6〜7月分
翌5月算定期間の区切り6月〜翌5月
翌8月実績+中間報告書2種

令和8年8月に出すのは1つだけ

令和8年8月に薬局が出すのは、中間報告書1つだけです。実績報告書が加わるのは令和9年8月からになります。

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2

いくら上げて、何に使うお金なのか

3.2%は要件ではありません

「3.2%」は施設基準の要件ではありません

改定の資料には、薬局の対象職員について令和8年度+3.2%、令和9年度+3.2%(事務職員は+5.7%)という数字が出てきます。ここでつまずく人が多いところです。

よくある勘違い 1

3.2%上げないと算定できない

実際は3.2%は国が支援する目標水準であって、施設基準の数値要件ではありません

よくある勘違い 2

達成できないなら届出をやめるべき

実際は達成できなくても算定してかまいません

ふく朗先生
ふく朗先生要件は「◯%上げろ」じゃなくて「入ってきた分は残さず配る」なんだ。ここは取り違えやすくて、「うちは3.2%も上げられないから」と届出そのものを見送ってしまう薬局もあるんだ。もったいないよね。

余ったら会社の利益になる? → なりません

「3.2%を達成したら、余った分は薬局の取り分では?」と考えたくなりますが、上振れしても手元には残りません

状況どうなるか
下振れ(3.2%に届かない)算定してよい
上振れ(収入がベースアップに使った額を上回る)追加でベースアップするのが原則。処方箋の受付回数の変動などで追加が難しい場合に限り、賞与などの方法で賃金改善してよい
繰越(翌年度に回す)原則できない。令和8年6月〜令和9年5月に得た収入は、原則として令和9年5月までの賃金改善に使う
ふく朗先生
ふく朗先生お金の出口が「追加で上げる」か「賞与などで配る」の二択で、貯めておくという選択肢がないんだ。細かい条件はあとから読めばいいから、まずはここだけ覚えておこう。

やむを得ず残ったときの逃げ道はひとつだけあります。受付回数などを見積もったうえでなお残余が生じた場合は、その年度の実績報告書を出す8月までの賃金改善に充て、充てた分を含めて報告する扱いです。

また、賃金改善の対象にした項目以外の賃金(業績で変動するものを除く)の水準を下げることも認められていません。

ふく朗先生
ふく朗先生つまり「上げた分だけ別の手当を削る」はできないってこと。

何に使えるお金なの?

留意事項通知では、この収入は「対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げ」と「それに伴って増える賞与・時間外手当・法定福利費(事業主負担分を含む)」以外には使えない、とされています。

よくある勘違い

基本給とは別に、賞与や残業代も上乗せする義務がある

実際は基本給等を上げれば自動的に増える分にも、この収入を充てていいという「使途の許可」です

基本給を上げると、賞与(基本給の◯か月分なら連動して増える)、残業の単価、社会保険料の事業主負担が、放っておいても増えます。その増加分の穴埋めにも使ってよい、という意味です。

使える使えない
基本給の引上げ業績に連動して増える賞与の部分
決まって毎月支払われる手当の引上げ薬局の設備投資・仕入れ・内部留保
上記に伴って増える賞与・時間外手当併設する店舗販売業のスタッフの賃上げ
上記に伴って増える法定福利費(事業主負担分)

夜勤がある薬局へ

恒常的に夜間を含む交替制勤務をとっている薬局の職員に支払われる夜勤手当は、決まって毎月支払われる手当に準じて基本給等に含めて差し支えないとされています。

ふく朗先生
ふく朗先生夜勤手当を上げた分も、賃上げの実績として報告書に書けるってこと。

夜勤手当 1回 5,000円 → 6,000円

+1,000円 も賃金改善の実績に入る

店舗販売業を併設している薬局へ(ドラッグストア併設型など)

ふく朗先生
ふく朗先生ドラッグストアが併設されている薬局を思い浮かべてもらうと近いよ。正確には、調剤をしている薬局とは別に「店舗販売業」の許可を取った売り場が同じ店舗にある場合の話。許可がひとつの薬局だけなら、ここは読み飛ばして大丈夫。

この収入は保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ使い、店舗販売業のスタッフには使えません。両者を明確に分けられない場合は、全職員数に「全収入のうち保険調剤による収入の割合」を掛けた人数を用いて判断します。

ふく朗先生
ふく朗先生売り場専任のスタッフには1円も回せないんだ。人をきれいに分けられない薬局は、保険調剤の売上比率で人数を按分して計算するよ。

スタッフ 10人 × 保険調剤による収入の割合 60%

= 6人 で判断する

※保険調剤による収入には、診療報酬・介護保険・補助金等に係るものを含み、労災保険に係るものを除きます
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3

誰の給料が上がるの?

管理薬剤師は対象外です

対象職員から除かれる人が施設基準で列挙されています。

区分対象になるか
40歳未満の勤務薬剤師
事務職員
事業主・使用者・開設者
管理者(管理薬剤師)
40歳以上の薬剤師
業務委託により勤務する者
本部職員・エリアマネージャー等(他の薬局や事業所を主たる勤務先とし、その薬局の調剤業務等に直接従事していない管理的業務の専従者)
ふく朗先生
ふく朗先生届出と報告書を作るのは管理薬剤師なのに、自分の給料は上がらない。……この加算のいちばん納得しづらいところだね。

算定期間の途中で40歳になった薬剤師

賃金の支払いの対象となった月の初日時点で40歳未満なら、その月は対象職員として扱います。

ふく朗先生
ふく朗先生誕生日が来た月は、まだ対象のまま。外れるのは翌月からだよ。
4月10日が40歳の誕生日の薬剤師対象か
4月分(4月1日時点で39歳)○ 対象
5月分(5月1日時点で40歳)✕ 対象外

本部やエリアの管理業務を兼務している人

その薬局の調剤業務や保険請求事務等を主として行っているなら対象にできます。ただし、主として直接従事した実績のある月だけです。1人が複数の薬局で従事した場合に、重複して数えることはできません。

ふく朗先生
ふく朗先生月ごとに判定するんだ。3店舗を回っている人を、3店舗ぶん重複して数えることはできないよ。
エリアマネージャー Aさん6月7月8月
○○薬局
△△薬局

そのほか、迷いやすいケース

派遣職員一定の要件を満たせば対象にできます。派遣元と相談・協力のうえ、その薬局に勤務する職員と同程度以上の賃金改善を行うこと、報告書に含めて作成することなどが条件です。
業務委託(請負)の職員対象外です。
対象職員が0人になった場合速やかに地方厚生(支)局長へ届出の変更を行い、変更の届出を行った日の属する月の翌月から算定しません。
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4

施設基準6項目の早見表

通知に書かれていることの全体像

1

調剤基本料に係る届出を実施している保険薬局であること

2

対象職員がいること

→ 第3章

3

収入を対象職員のベースアップ等に用いること

→ 第2章

4

労働基準法等を遵守すること

5

賃金改善の方法と就業規則の内容を対象職員に周知すること

照会を受けたら、書面などで分かりやすく回答すること

6

店舗販売業を併設する場合、保険調剤に従事する職員にのみ用いること

→ 第2章

ふく朗先生
ふく朗先生見落とされやすいのが5番。スタッフに「私の給料はいくら上がったんですか」と聞かれたときの答え方まで、施設基準に書いてあるんだ。掲示して終わりじゃなくて、聞かれたら書面で説明できる状態にしておくと安心だよ。
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5

届出のしかた(様式103)

提出方法に落とし穴があります

1

様式103を作成する

施設基準の届出は様式103を使います。

2

給与の支払い実績を確認する

調剤ベースアップ評価料では、届出前1か月の給与の支払い実績が必要です。

3

都道府県別の専用メールアドレスにExcelで送る

薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局都道府県事務所ごとの専用アドレスに、Excelファイルを添付して提出します。

4

6月から算定開始

令和8年6月からの算定には、令和8年5月中(6月1日必着)の届出が必要でした。

ふく朗先生
ふく朗先生ここ大事これは知らないとハマるところ。PDF・Zip・パスワード付きファイル・OneDriveの共有リンクは受け付けてもらえないんだ。Excelをそのまま添付するのが正解だよ。

令和9年6月以降について

令和9年6月以降も継続して算定する場合、あらためての届出は不要です。

賃金改善は、原則として算定を開始した月から実施する必要があります。やむを得ない理由がある場合に限り、その年度末までに算定開始月までさかのぼって実施すれば、算定開始月から実施したものとみなされます。

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6

「ちゃんと上げた証明」=8月の中間報告書

届出して算定して終わり、ではありません

何と何を比べるのか

「上がった」の判定は、令和8年3月時点の給与体系をその年度の職員に当てはめた場合の基本給等総額(A)と、実際にその年度に勤務している職員の基本給等総額(B)の差で行います。

賃金改善の実績= A と B の差

定期昇給がある薬局

基本給 定期昇給分
A
基本給 定期昇給分 ベースアップ
した分 ★
B

定期昇給がない薬局

基本給
A
基本給 ベースアップ
した分 ★
B
  • A=令和8年3月の給与体系を、今の職員に当てはめた額
  • B=実際に今払っている額
  • =AとBの差=賃金改善の実績

定期昇給分はAにもBにも同じだけ入るので、差し引きゼロになって★に残りません。これが「定期昇給はベースアップに数えられない」の正体です。

ふく朗先生
ふく朗先生比べるのは「去年より給料が増えたか」じゃないんだ。「去年の給与テーブルのままだったら払っていたはずの額より増えたか」。ここが報告書でいちばん手間のかかるところだから、ゆっくり見ていこう。

迷ったときの判定テスト

賃金表がない薬局は、給与規定や雇用契約に定める基本給等について引上げを行います。ベースアップかどうか迷ったら、こう考えてください。

今、同じ年齢・同じ役職の人を新しく採用するとしたら、
去年より高い給料を提示することになりますか?

YES

それがベースアップです

NO

(去年と同じ額を提示する)その人の昇給は定期昇給です

ふく朗先生
ふく朗先生報告書づくりでいちばん時間を食うのが、令和8年3月時点の給与テーブルを引っ張り出すところ。まだ手元になければ、今のうちに印刷して報告書のファイルに綴じておこう。毎年使うものだから、来年の自分がラクになるよ。

報告書は2種類あります

報告書何を報告する?
賃金改善中間報告書算定している年度の取組状況を、薬局が適切に把握するためのもの
賃金改善実績報告書前年度の賃金改善の取組状況を評価するためのもの

どちらも様式104を使い、毎年8月に地方厚生(支)局長へ報告します。

時期出すもの
令和8年8月令和8年度の中間報告書(令和8年6月・7月分の賃上げ実績)
令和9年8月令和8年度の実績報告書 + 令和9年度の中間報告書
令和10年8月令和9年度の実績報告書 + 令和10年度の中間報告書

書類は3年間保管

算定に係る書類(報告書の記載内容の根拠となる資料など)は、算定する年度の終了後3年間保管します。

賃金水準を下げざるを得ない場合

事業の継続のために対象職員の賃金水準を引き下げたうえで賃金改善を行う場合は、収支状況や引下げの内容を記載した特別事情届出書(様式94)を届け出ます。

ふく朗先生
ふく朗先生給料を下げながらこの加算を取るなら、理由を届け出ないといけない、ということ。年度を超えて下げることになったら、次の年の中間報告書を出すときにもう一度出す必要があるよ。

複数店舗をまとめて作る場合

ふく朗先生
ふく朗先生同じ給与体系のグループなら、店舗ごとに作らず1枚にまとめられる。使う様式が「別添1」から「別添2」に変わるだけだよ。

提出期限は管轄の厚生局で確認を

  • 提出期限は地方厚生局ごとに案内されています。必ず管轄の厚生局のページで確認してください。参考までに、関東信越厚生局は令和8年8月31日(月)としています。
    関東信越厚生局のページを見る

【2026年8月】請求内容の確認を求める事務連絡が出ています

令和8年8月19日付で、ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について、届け出た施設基準と請求内容に疑義が生じている例が散見されるという事務連絡が出ました。令和8年6月・7月診療分は審査支払で特段の対応が図られましたが、8月診療分以降は、届出内容を改めて確認したうえで適切に請求するよう求められています。

ふく朗先生
ふく朗先生ここ大事6月・7月は大目に見てもらえた、ということ。受理された施設基準の控えを引っ張り出して、レセプトと突き合わせておこう。
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7

よくある勘違い5つ

報告書で数字が合わなくなる前に

よくある勘違い 1

定期昇給もベースアップに数えられる

実際は同じ年齢・職位の人の給与が前年度より上がることがベースアップです。年齢や勤続年数が増えたことによる昇給は含まれません(→ 第6章の図

よくある勘違い 2

管理薬剤師の給料も上がる

実際は管理者は対象職員から除かれます(→ 第3章

よくある勘違い 3

3.2%上げないと算定できない

実際は達成できなくても算定できます(→ 第2章

よくある勘違い 4

届出さえ出せば終わり

実際は毎年8月の報告書と、3年間の書類保管まで含めて要件です(→ 第6章

よくある勘違い 5

併設しているドラッグストア部門のスタッフにも配れる

実際は保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ使えます(→ 第2章

ふく朗先生
ふく朗先生特に多いのが1番。「毎年ちゃんと昇給させてるから大丈夫」と考えたくなるんだけど、それだと報告書の段階で数字が合わなくなるんだ。ここは僕も最初は引っかかったよ。
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ふく朗先生
執筆・監修
ふく朗先生(薬剤師)
熊本県の保険薬局で管理薬剤師として勤務。派遣薬剤師として複数の薬局を経験したのち現職。告示・通知・疑義解釈にあたって執筆・確認しています。
▶ プロフィールを見る(タップで移動)

免責事項

  • 本記事は情報提供を目的としたもので、個別の届出・算定の可否を保証するものではありません。実際の届出・算定にあたっては、必ず管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
  • 本記事の内容は2026年8月30日時点の告示・通知・疑義解釈に基づいています。制度は改正・訂正されることがあります。
  • 本記事に記載した提出期限は関東信越厚生局の案内によるものです。管轄の厚生局により異なる場合があります。

参考・出典(すべて別タブで開きます)

本記事は、厚生労働省が公開している令和8年度診療報酬改定の告示・通知・疑義解釈、および保険薬局向けの届出・報告書の資料にもとづいて作成しています。原文は下記の特設ページからすべて確認できます。

本記事に引用した告示・通知・事務連絡の原文は、厚生労働省ホームページ(2026年8月30日に利用)によります。

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