令和8年6月に始まった、保険薬局向けの新しい評価料です。告示・通知・疑義解釈にあたって整理してみると、むずかしいのは2か所だけでした。管理薬剤師が実際につまずくところにしぼって解説します。




30秒でわかる3行まとめ
処方箋の受付1回につき4点
届出をした保険薬局が算定できます。令和9年6月以降は8点になります。
入ってきたお金は、全額スタッフの賃上げに使う
薬局の利益にはなりません。使いみちは通知で限定されています。
毎年8月に報告書を出す
「ちゃんと上げました」を書面で報告するところまでがセットです。実務でいちばん手間がかかるのはここです。
どんな加算? 点数と施行日
調剤点数表 第5節「その他」区分40
調剤ベースアップ評価料は、令和8年度診療報酬改定で新設され、令和8年6月1日から施行されました。
| 点数 | 4点 |
|---|---|
| 算定単位 | 処方箋の受付1回につき |
| 算定の前提 | 施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出ていること |
| 令和9年6月以降 | 8点 |
「8点」について
告示上は「所定点数の100分の200」という書き方です。また、実際の経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動して経営状況に支障が生じた場合は、令和9年度予算編成において加減算を含む更なる調整を行うとされているため、8点は確定ではありません。

1年の流れ
令和8年8月に出すのは1つだけ
令和8年8月に薬局が出すのは、中間報告書1つだけです。実績報告書が加わるのは令和9年8月からになります。
いくら上げて、何に使うお金なのか
3.2%は要件ではありません
「3.2%」は施設基準の要件ではありません
改定の資料には、薬局の対象職員について令和8年度+3.2%、令和9年度+3.2%(事務職員は+5.7%)という数字が出てきます。ここでつまずく人が多いところです。
よくある勘違い 1
3.2%上げないと算定できない
実際は3.2%は国が支援する目標水準であって、施設基準の数値要件ではありません
よくある勘違い 2
達成できないなら届出をやめるべき
実際は達成できなくても算定してかまいません

余ったら会社の利益になる? → なりません
「3.2%を達成したら、余った分は薬局の取り分では?」と考えたくなりますが、上振れしても手元には残りません。
| 状況 | どうなるか |
|---|---|
| 下振れ(3.2%に届かない) | 算定してよい |
| 上振れ(収入がベースアップに使った額を上回る) | 追加でベースアップするのが原則。処方箋の受付回数の変動などで追加が難しい場合に限り、賞与などの方法で賃金改善してよい |
| 繰越(翌年度に回す) | 原則できない。令和8年6月〜令和9年5月に得た収入は、原則として令和9年5月までの賃金改善に使う |

やむを得ず残ったときの逃げ道はひとつだけあります。受付回数などを見積もったうえでなお残余が生じた場合は、その年度の実績報告書を出す8月までの賃金改善に充て、充てた分を含めて報告する扱いです。
また、賃金改善の対象にした項目以外の賃金(業績で変動するものを除く)の水準を下げることも認められていません。

何に使えるお金なの?
留意事項通知では、この収入は「対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げ」と「それに伴って増える賞与・時間外手当・法定福利費(事業主負担分を含む)」以外には使えない、とされています。
よくある勘違い
基本給とは別に、賞与や残業代も上乗せする義務がある
実際は基本給等を上げれば自動的に増える分にも、この収入を充てていいという「使途の許可」です
基本給を上げると、賞与(基本給の◯か月分なら連動して増える)、残業の単価、社会保険料の事業主負担が、放っておいても増えます。その増加分の穴埋めにも使ってよい、という意味です。
| 使える | 使えない |
|---|---|
| 基本給の引上げ | 業績に連動して増える賞与の部分 |
| 決まって毎月支払われる手当の引上げ | 薬局の設備投資・仕入れ・内部留保 |
| 上記に伴って増える賞与・時間外手当 | 併設する店舗販売業のスタッフの賃上げ |
| 上記に伴って増える法定福利費(事業主負担分) | — |
夜勤がある薬局へ
恒常的に夜間を含む交替制勤務をとっている薬局の職員に支払われる夜勤手当は、決まって毎月支払われる手当に準じて基本給等に含めて差し支えないとされています。

夜勤手当 1回 5,000円 → 6,000円
+1,000円 も賃金改善の実績に入る
店舗販売業を併設している薬局へ(ドラッグストア併設型など)

この収入は保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ使い、店舗販売業のスタッフには使えません。両者を明確に分けられない場合は、全職員数に「全収入のうち保険調剤による収入の割合」を掛けた人数を用いて判断します。

スタッフ 10人 × 保険調剤による収入の割合 60%
= 6人 で判断する
※保険調剤による収入には、診療報酬・介護保険・補助金等に係るものを含み、労災保険に係るものを除きます誰の給料が上がるの?
管理薬剤師は対象外です
対象職員から除かれる人が施設基準で列挙されています。
| 区分 | 対象になるか |
|---|---|
| 40歳未満の勤務薬剤師 | ○ |
| 事務職員 | ○ |
| 事業主・使用者・開設者 | ✕ |
| 管理者(管理薬剤師) | ✕ |
| 40歳以上の薬剤師 | ✕ |
| 業務委託により勤務する者 | ✕ |
| 本部職員・エリアマネージャー等(他の薬局や事業所を主たる勤務先とし、その薬局の調剤業務等に直接従事していない管理的業務の専従者) | ✕ |

算定期間の途中で40歳になった薬剤師
賃金の支払いの対象となった月の初日時点で40歳未満なら、その月は対象職員として扱います。

| 4月10日が40歳の誕生日の薬剤師 | 対象か |
|---|---|
| 4月分(4月1日時点で39歳) | ○ 対象 |
| 5月分(5月1日時点で40歳) | ✕ 対象外 |
本部やエリアの管理業務を兼務している人
その薬局の調剤業務や保険請求事務等を主として行っているなら対象にできます。ただし、主として直接従事した実績のある月だけです。1人が複数の薬局で従事した場合に、重複して数えることはできません。

| エリアマネージャー Aさん | 6月 | 7月 | 8月 |
|---|---|---|---|
| ○○薬局 | ○ | ✕ | ○ |
| △△薬局 | ✕ | ○ | ✕ |
そのほか、迷いやすいケース
| 派遣職員 | 一定の要件を満たせば対象にできます。派遣元と相談・協力のうえ、その薬局に勤務する職員と同程度以上の賃金改善を行うこと、報告書に含めて作成することなどが条件です。 |
|---|---|
| 業務委託(請負)の職員 | 対象外です。 |
| 対象職員が0人になった場合 | 速やかに地方厚生(支)局長へ届出の変更を行い、変更の届出を行った日の属する月の翌月から算定しません。 |
施設基準6項目の早見表
通知に書かれていることの全体像
調剤基本料に係る届出を実施している保険薬局であること
対象職員がいること
→ 第3章
収入を対象職員のベースアップ等に用いること
→ 第2章
労働基準法等を遵守すること
賃金改善の方法と就業規則の内容を対象職員に周知すること
照会を受けたら、書面などで分かりやすく回答すること
店舗販売業を併設する場合、保険調剤に従事する職員にのみ用いること
→ 第2章

届出のしかた(様式103)
提出方法に落とし穴があります
様式103を作成する
施設基準の届出は様式103を使います。
給与の支払い実績を確認する
調剤ベースアップ評価料では、届出前1か月の給与の支払い実績が必要です。
都道府県別の専用メールアドレスにExcelで送る
薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局都道府県事務所ごとの専用アドレスに、Excelファイルを添付して提出します。
6月から算定開始
令和8年6月からの算定には、令和8年5月中(6月1日必着)の届出が必要でした。

令和9年6月以降について
令和9年6月以降も継続して算定する場合、あらためての届出は不要です。
賃金改善は、原則として算定を開始した月から実施する必要があります。やむを得ない理由がある場合に限り、その年度末までに算定開始月までさかのぼって実施すれば、算定開始月から実施したものとみなされます。
「気になるところから読む」にもどる「ちゃんと上げた証明」=8月の中間報告書
届出して算定して終わり、ではありません
何と何を比べるのか
「上がった」の判定は、令和8年3月時点の給与体系をその年度の職員に当てはめた場合の基本給等総額(A)と、実際にその年度に勤務している職員の基本給等総額(B)の差で行います。
賃金改善の実績= A と B の差
定期昇給がある薬局
定期昇給がない薬局
- A=令和8年3月の給与体系を、今の職員に当てはめた額
- B=実際に今払っている額
- ★=AとBの差=賃金改善の実績
定期昇給分はAにもBにも同じだけ入るので、差し引きゼロになって★に残りません。これが「定期昇給はベースアップに数えられない」の正体です。

迷ったときの判定テスト
賃金表がない薬局は、給与規定や雇用契約に定める基本給等について引上げを行います。ベースアップかどうか迷ったら、こう考えてください。
今、同じ年齢・同じ役職の人を新しく採用するとしたら、
去年より高い給料を提示することになりますか?
それがベースアップです
(去年と同じ額を提示する)その人の昇給は定期昇給です

報告書は2種類あります
| 報告書 | 何を報告する? |
|---|---|
| 賃金改善中間報告書 | 算定している年度の取組状況を、薬局が適切に把握するためのもの |
| 賃金改善実績報告書 | 前年度の賃金改善の取組状況を評価するためのもの |
どちらも様式104を使い、毎年8月に地方厚生(支)局長へ報告します。
| 時期 | 出すもの |
|---|---|
| 令和8年8月 | 令和8年度の中間報告書(令和8年6月・7月分の賃上げ実績) |
| 令和9年8月 | 令和8年度の実績報告書 + 令和9年度の中間報告書 |
| 令和10年8月 | 令和9年度の実績報告書 + 令和10年度の中間報告書 |
書類は3年間保管
算定に係る書類(報告書の記載内容の根拠となる資料など)は、算定する年度の終了後3年間保管します。
賃金水準を下げざるを得ない場合
事業の継続のために対象職員の賃金水準を引き下げたうえで賃金改善を行う場合は、収支状況や引下げの内容を記載した特別事情届出書(様式94)を届け出ます。

複数店舗をまとめて作る場合

提出期限は管轄の厚生局で確認を
- 提出期限は地方厚生局ごとに案内されています。必ず管轄の厚生局のページで確認してください。参考までに、関東信越厚生局は令和8年8月31日(月)としています。
関東信越厚生局のページを見る
【2026年8月】請求内容の確認を求める事務連絡が出ています
令和8年8月19日付で、ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について、届け出た施設基準と請求内容に疑義が生じている例が散見されるという事務連絡が出ました。令和8年6月・7月診療分は審査支払で特段の対応が図られましたが、8月診療分以降は、届出内容を改めて確認したうえで適切に請求するよう求められています。

よくある勘違い5つ
報告書で数字が合わなくなる前に
よくある勘違い 1
定期昇給もベースアップに数えられる
実際は同じ年齢・職位の人の給与が前年度より上がることがベースアップです。年齢や勤続年数が増えたことによる昇給は含まれません(→ 第6章の図)

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免責事項
- 本記事は情報提供を目的としたもので、個別の届出・算定の可否を保証するものではありません。実際の届出・算定にあたっては、必ず管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
- 本記事の内容は2026年8月30日時点の告示・通知・疑義解釈に基づいています。制度は改正・訂正されることがあります。
- 本記事に記載した提出期限は関東信越厚生局の案内によるものです。管轄の厚生局により異なる場合があります。
参考・出典(すべて別タブで開きます)
本記事は、厚生労働省が公開している令和8年度診療報酬改定の告示・通知・疑義解釈、および保険薬局向けの届出・報告書の資料にもとづいて作成しています。原文は下記の特設ページからすべて確認できます。
- 令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について(厚生労働省)
※調剤ベースアップ評価料の告示・通知・様式・報告書の手引きは、このページの「調剤ベースアップ評価料の届出について」の項にまとまっています。 - 関東信越厚生局:賃金改善実績報告書・賃金改善中間報告書について
※提出期限の記載を参照しました。管轄の厚生局により異なる場合があります。
本記事に引用した告示・通知・事務連絡の原文は、厚生労働省ホームページ(2026年8月30日に利用)によります。
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